Vol.10 1999.11.4発行
よく、300ヤードのドライバーショットも1センチメートルのパターも1ストロークだと言います。またすべてパーオンで2パットだとすると、72回打つうちの半分50%はパットだとも言えます。100で回る人でも40パットとして40%はパターで打つ訳です。ドライバーはティーショットでOBをしない限り、1ラウンドせいぜい14回でしょう。まして、アイアンなどは、へたをすると一日使わないクラブがあるほどです。これほどたくさん打つのに、パットの練習はあまりしない方も多いのではないでしょうか。
ラインを読む事も重要ですが、私は 自分の思っている所に打てる確率をいかに高くするかがパターの神髄だと思っています。
パターは十人十色、形もないし打ち方も自由、クラブも規則上、最も規制が少ないと思います。たとえば、グリップの断面が「円」でなくてもよいのは、パターだけですし、複数のグリップをつけてよいのもパターだけです。クラブのかかとの部分でない所にシャフトをつけてよいのもパターだけですし、フェイス面の表面粗さや構造もかなり規制がゆるくなっています。
パターはグリップも構えも打ち方も様々です。プロの通常のショットは、一部の一本足打法等を除き、ほとんど似ていますが、パターだけは、左手を下にするか上にするか、右手を先に握って左手の人差し指を右手に乗せるか、通常のクラブの様に握るか、もっと右手と左手の重なりを多くして握るか等々、色々なやり方をします。打ち方もコツンと打つ人や、ストロークで打つ人、ボールの位置も目の下の人、体から遠い人、背中をうんとまるめて打つ人、腕を曲げて5角形を崩さないで打つ人・・・・。きりがありません。
私も実際、パターはこうでなくてはいけない、という確固たる理論も理屈も知りませんし、押しつける気持ちも毛頭ありません。ただ、もしパターで悩んでいる方は、参考までに試してみてもいかがでしょうか?という程度でお話させていただきます。
私はスイートエリアが広いクラブを選びます。プロは、フェイスの直径3ミリ程度の範囲で打っているとも言われますが、残念ながらアマチュアの場合、パターでさえ、常に同じスポットで打つことはできません。だとすれば、スイースポットをはずしても、いつも同じ距離でまっすぐ転がるクラブを使うに越したことはありません。
スイートエリアが広いというのは、前回までにドライバー等で議論したのと同様に、ヘッドの慣性モーメントが大きい方がよい訳です。慣性モーメントは、重心から離れた所にウエイトが集中し、しかも重さが重いほど大きくなります。
そういう意味から、私はヘッド全体が軽いクラブは選びません。もしヘッドが軽い木でできていたらどうでしょう。ボールはなかなかうまく転がりそうにあありませんし、少しでも芯をはずしたら、ヘッドはボールの重さに負け、まず思った通り転がらないでしょう。では、逆に重すぎるヘッドはどうでしょうか。確かに、ボールに比べて充分重いヘッドなら、どこで打ってもヘッドがボールに負ける事なく、まっすぐ転がる様な気がします。ただ問題は、距離感を出す微妙なタッチが伝わらないという事です。何事もバランスが重要ですが、私の場合は、タッチが伝わり、距離感を出すスイングができる範囲で、ヘッドのできるだけ重い物(=慣性モーメントが大きい)を選ぶようにしています。
●ヘッドが軽いパター | ●形や大きさが同じでヘッドが重い場合 |
次にウエイト配分ですが、これは文句なく先端とヒールにウエイト配分されているクラブ、具体的にはタングステン等が先端とヒールに埋め込んであるクラブを使います。ヘッドの重心(中心)から遠い所に重量が配分されているので、総重量が同じでも、慣性モーメントが大きくなります。
スイートエリアを広げる意味で、重心位置をドライバーの様に後ろ(構えた時に右の方)に持って来ているパターもありますが、私はこれを選びません。もし重心が20センチメートルも後ろ(右の方)にあるパターがあったらどうでしょうか。確かにスイートエリアは広いかもしれませんが、方向性が安定しない事は明白でしょう。
私は、パターを選ぶときに、グリップを軽く持ってぶら下げたときに、スイートスポットがシャフトの延長線上にあるクラブを選びます。スイートスポット、この場合、フェイスからヘッド中心部方向に下ろした線が重心と交わるフェイス上の点が、シャフトの延長線上にあるという事ですが、パターのシャフトを机の角の端の方に、つりあうように置いてみれば、よりよく分かります。この時にフェイス面が、まっすぐ天井を向けば、シャフトの延長線上に重心があると言えます。
もちろん、こういう構造でないパターもたくさんあり、それが悪いという訳ではありませんが、これも芯をはずす確率の高いアマチュアにとっては、大きな問題になるのです。30センチメートルの定規でゴルフボールを打つことを考えて見てください。定規の先の方(28センチメートルの目盛り付近)でボールを打つとして、持つ位置をもう一方の端の方(2センチメートルの目盛り付近)にするのと、ほぼ中央(15センチメートルの目盛付近)にするのでは、どちらが打ちやすく、正確に打てますか? 当然真ん中を持って打った方が、バラツキやブレが小さくなると思います。
パターでも同様です。芯をはずした時の事を極端に考えれば、ヘッドの中心にシャフトの延長線があった方がよいことは、充分理解できる事ではないかと思います。
ドライバーやアイアンでもオーバースイングや思い切り力を入れたバックスイングより、ハーフショットの方が芯に当たる確率が高いと思います。パターも同様に、バックスイングを小さくし、フォローを大きくホールに向けて方向性を出した方が、芯をはずす確率が小さくなり、結果的によく入ると私は考えています。バックスイングの大きさで距離感を出すために、パチンと打つ打ち方をしない人も多いと思いますが、30メートルのロングパットと30センチのショートパットを、バックスイングの大きさだけで距離感を調整する人はまずいないと思います。どんな人もパチンと打つ要素はあると思います。パットに悩んでいる方は、一度こういう打ち方も試してみて損はないと思います。
プロはドライバーもバンカーショットもパターもすべて同じリズムで打つと言われます。アマチュアもこうすべきかどうかは、私の専門外なので分かりませんが、少なくともパターにおいても、早いバックスイングは、芯に当たる確率を下げる事になると思います。ハエタタキでハエを打つときや、飛んでいる蚊をパッチンする時、ゆっくりバックスイングをして、パンと打ちませんか?
先日の試合で、尾崎直道が初日長尺パターを使い、やはりダメで2日目から元に戻したのをご存じの方も多いと思います。一朝一夕にはうまく行かないだろう事は容易に想像がつきます。とにかく、思った所に打てるようにする事が一番のポイントです。プロでさえ、自宅の絨毯に擬似的なホールを置いて、連続20発入るまでは寝ないという連取をする話を聞いた事があります。同じ条件の絨毯でさえ、連続でカップインすることは難しいのですから、芝目や傾斜がある本当のグリーンではいかに難しいかがよく分かります。
パターに限って言えば、筋力やレートヒットや手首の返しや腰や肩の回し方等ほとんど関係ない世界です。練習して一番プロに近づく可能性が高いのは、パターかもしれません。それを信じて、皆さん頑張りましょう。
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