Vol.05 1999.08.20発行
インパクト時に決まる飛距離を決める要因は、以下の3つであるというお話をしました。そしてこれは努力によってコントロールできると・・・・。
またインパクト後の代表的要因として、以下の6つを挙げました。
ボールの初速は最高、最適な打ち出し角度とスピン量でヒットされ、風はフォロー、天気は良く気圧は低い。地面には水平に近い角度で当たり、落ちた場所は固く、しかも斜面は下り、ラフは短く芝目も順目・・・・。こういう場合が、おそらく一番飛ぶ条件でしょう。しかし、実際は色々な条件が複雑にからみあるので、なかなかそううまくは行きません。
考えていただきたいのは、飛距離はキャリー+ラン(空中を飛んでいる距離+地面にぶつかってからのバウンドや転がりの距離)であるという事です。よくプロのドライバーショットが、何十ヤードもランを稼いでいるのをテレビでご覧になる方もあるでしょう。なぜ、あれほどランが出るので しょうか。
最近、スピンコントロールという言葉をよく耳にします。弾道というものが見直されてきた結果でもあります。以前は、低く出てどんどん伸びていく様なボール(下記グラフの緑色ライン②)がよいとされていました。アイアンショットでもバックスピンでボールが戻るのがプロのショットだという評価もあり、それだけで歓声が上がったものです。しかし、バックスピンで戻る距離をコントロールするのは難しい、スピンはほどほどにした方が距離が出る、という様な事が分かって来てからは、スピンをコントロールする打ち方やクラブにスポットライトが当たるようになった訳です。
ボールがランするかどうかは、上記(4)~(6)で決まると言えます。落ちた場所が、深いラフか、ぬかるみか、固いベアグランドか、芝が順目か、斜面の角度がどうなっているのか・・・・等によって、バウンドのし方や転がり方が変わるのは当然です。よく高速道路と言われる左右のカート道で跳ね、思わぬ飛距離を稼ぐこともありますが、まさか初めからここを狙ってティショットする人も少ないでしょう。普通はフェアウエイに落ちる事を想定して打つわけですが、落ちるであろう付近の地面がどのような状況なのかは、考える必要があります。ただ、これは状況判断であって、積極的に落ちる場所を選択することは困難です。
一番のポイントは、「ボールが地面に当たる時の角度」です。ランを考えるとボールはより水平に近い角度で地面に衝突すべきです。より水平に衝突させるには、一つには低い弾道で打ち出すという事があります。もしトップとテンプラでキャリーが同じであれば、トップの方がトータルの飛距離が出るのはよく理解できると思います。高く上がったボールは、地面にボスっと当たって転がらないのに対し、石ころを低く投げると水面を弾むように、低いボールであればランが出ます。またキャリーは短くても、ランでテンプラボールをオーバードライブする事もよくあります。
話を少し元に戻しますが、本当によく飛ぶボールは、適度にスピンがコントロールされているボールだと言われています。(上記グラフの黄色ライン①)。この意味は、スピンが多過ぎると、確かに伸びのあるボールの様に見えますが、実は途中からボールが吹き上がり、落下する時の角度は垂直に近づき、しかももろに風の影響を受けるボールになってしまうのす(上記グラフの緑色ライン②)。この様なボールは、たとえば雨が降っており、地面が柔らかいような場合は、ほとんどランに期待ができません。スピンがほどほどに抑えられたボールは、この吹き上がり現象がなく、しかも地面への突入角度もより水平に近いので、ランも稼げるということになるわけです。スピンコントロールの方法や理論は、次号以降で詳しくお話したいと思います。ちなみに、スピンが全然かかっていないボールは、フォークボールの様に落ちてしまいますので、あくまでも最適なスピン(もちろんバックスピン)が必要であるという事は言うまでもありません。
スピンコントロールが無理でも(正直難しい)、たとえば風の強い日は低いボールで攻めるように、フェアウエイの状況によって打ち出し角度を変える事は必要でしょう。ランは、あくまでも状況をよく判断し、キャリー+ランが最大になるように、打ち出し角度を調整するべきだと思います。
ちなみに、ランの距離はボールの初速にはあまり関係ないというデータがあります。言い換えれば打ち出したときのエネルギーは、ボールが落ちるまでの間に空気抵抗で消耗しているので、地面にぶつかる時の速度は初速が速くても遅くてもあまり違いがないということだと思います。
キャリーは、(1)ボールの初速、(2)ボールの打ち出し角度(3)ボ ールのスピン量、プラス(4)自然の要因、で決まります。ボールの初速 は速い方がよいに決まっており、自然の要因はアゲインストの場合は低い ボールの方がよいという程度のことしかコントロールできる要素がないの で、今回はボールの打ち出し角度とスピン量について触れたいと思います。 ボールの初速を上げる方法については次号で詳しくお話します。
真空中では、45度で打ち出されたボールが一番良く飛ぶと言われています。 しかし、実際は空気抵抗もあり、スピンの影響もあるので、そうはなりま せん。ボールを45度で打ち出すには、ロフトゼロのクラブで45度上向きに 打ち上げるのと、ロフト45度のクラブを水平に振る方法が考えられますが、 全く意味合いが違います。
●ロフトが小さければ、スピン量が少なくなり、ヘッドエネルギーの多くがボールの初速に費やされる。 | ●ロフトが大きいと、エネルギーの多くがスピンのエネルギーに費やされてしまい、ボールの初速が落ちてしまう。 |
もしこの方法を全く同じヘッドスピードで実現したとします。ロフト45度のドライバーがあったとして、ヘッドスピードのエネルギーは、スピンをかける事にもかなり費やされてしまい初速は大きくなりません。しかし、高さが80センチメートルもあるような、超ロングティーの上にボールを置き、ロフトゼロのドライバーで下からアッパーブローに打ち上げれば、ヘッドスピードのかなりの部分が飛距離に貢献するので、相当な飛距離が稼げるでしょう。実際にはアッパーブローに打つのは非常に難しいので、このような打ち方はできません。そこで、我々はほどほどのロフトのドライバーでボールにほどほどのスピンを与え、ほどほどの高さのティーにボールを置いて、ほどほどアッパーブローに打っていると言えます。スピンが多すぎれば吹き上がるし、少なければフォークボールになってしまう、ティーは高すぎれば打ちにくいし低すぎればアッパーに打てない、このようなジレンマの中で、最適なクラブや打ち方を見つけるのがまたゴルフの楽しみでもある訳です。
最高のキャリーを生み出す弾道が、打ち出し角何度でスピン量が何回転という詳細なデータはないのですが、ヘッドスピードによって大きく異なります。ヘッドスピードが速い人ほど、同じロフトで打ってもボールが上がりやすくスピン量も大きくなります。従って、ロフトの小さいクラブを選び、スピン量をコントロールしなくてはなりません。また逆にヘッドスピードの遅い人は、ロフトが大きいクラブでかつスピン量も稼がなくてはなりません。またボールも柔らかい方が打ち出し角度が大きくなります。
創刊号でもお話しましたが、インパクト時ボールとクラブフェイスは、平均的な男性で約2センチメートル接しています。ボールの硬さが同じであれば、ヘッドスピードの速いプロはもっと長く接しており、逆に非力な女性はもっと接触時間が短いということになります。接触時間が長ければ、ボールが離れるポイントはクラブの軌道が上向きになってからという事になりますから、ボールは上がりやすいはずです。従って、ヘッドスピードの速い人は、同じロフトで打った場合、ボールが上がりやすくスピン量も大きいわけです。逆にヘッドスピードの遅い人は、クラブの軌道が水平に近い部分でボールが離れるため、ボールは上がりにくいですし、スピン量も少ないということになります。女性が柔らかいボールを使うというのは、ボールがつぶれている時間を長くして、ボールが離れるポイントを軌道が上向くまで遅らせるという効果を期待している訳です。
●ヘッドスピードが速い、又はボールが柔らかい場合、ボールがフェイスから離れるポイントが遅くなる、結果としてボールの打ち出し角度は大きくなる。ヘッドスピードに合わせたボール選びも飛距離アップのこつと言える。 | ●ヘッドスピードが遅い場合、ボールがつぶれる度合いが小さい。従ってすぐにボールとフェイスが離れてしまうので、ボールの打ち出し角度は 小さく、結果的にボールは上がらない。 |
ボールの打ち出し角度を高くする一般的方法としては、
があります。ティーの高さを上げる事で打ち出し角度が上がる理由は2つあり、1つ目はヒットするポイント(打点)をフェイスの上の方にシフトするという効果です。ボールのヒットするポイントが上の方になるという事は、実はフェイス面は上下方向にも湾曲しており、上の方で打つという事は、クラブのロフトが大きくなるという事と同じです。実は、このことがスピンコントロールに深く関わるのですが、そのお話は次回以降のお楽しみということにしましょう。
2つ目は、よりアッパーに打てるということです。ボールの位置を変えずにスイングをアッパーにににするのは、とても難しいと思いますが、ボールの位置を左にしてアッパーに打つ事は比較的簡単です。しかし同時にスイングを上から見た場合の軌道が、創刊号で示した理論により、左に向くことがあるので、注意が必要です。
もちろん、打ち出し角度を低くするには、上記の逆を行えばよい訳です。
結論から言えば、まずキャリーを考えるべきでしょう。ランは確かに20ヤード、30ヤードの飛距離を伸ばすことにもなりますが、あまりにも自然や偶然が左右しやすものです。それに対し、風の影響はあるとはいうものの、キャリーのコントロールは自分でしやすいので、まずはキャリーを伸ばす事を考えればよいと思います。ただ、適切な状況判断でクラブ選択や弾道の調整をした方がよい事は、間違いありません。
キャリーを伸ばす方法の一つとして、ティーの高さとボールの位置、ボールの硬さ、ロフトの変更により、打ち出し角度とスピン量を最適にするという方法をご紹介しました。よく初心者の女性が、どのクラブを使っても飛距離が変わらないとか、スプーンより7番アイアンの方が距離が出る、という事を言っていますが、これはかなり本質をついている議論です。そういう私も1番アイアンより、3番アイアンの方が間違いなく距離は出ますが。(笑)
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