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ゴルフは理論!HPへ

■再びインパクト、そしてその後■(号外)

号外Vol.02 1999.07.07発行

おかげさまで、当メールマガジンは発行総数で読者数2,500名を突破!これからも頑張ります。創刊号では、インパクトの時間(ボールとクラブが接している時間)は、1万分の5秒、しかもその時、ボールは相当変形しているというお話をしました。またボールの弾道は、アドレスやバックスイングやクラブがどうこういうが、実は結果としてのこの1万分の5秒だけですべてが決まる、というお話もしました。そこで今回は、このインパクトをもう少し掘り下げたいと思います。号外ですので、ふーんそうなんだ・・・・・・という軽い気持ちで読んでください。

●インパクトは何センチ?(平均的男性のドライバーの場合です)●

計算すれば簡単ですが、ボールとクラブが接している長さはどれくらいだか想像したことはありますか?平均1万分の5秒でヘッドスピードが40メートル毎秒だとすると、2センチメートルということになります。手首を返して打てとか、フォローはこうだとか色々言いますが、ボールの弾道はたった2センチメートルで決まるのです。この2センチメートルをコントロールするために、グリップやスタンスやバックスイングやフォロースルーや・・・・・と、何と多くのチェックポイントがあるのでしょうか。それぞれのチェックポイントが、いったいどのようにこの2センチメート ルに影響を与えるのか、これを考えることなしにゴルフを教えることは、とても罪なことだと思いませんか。

●空気抵抗はどれくらい?

高速道路で窓を開けてドライバーを真横に出すことを考えてみて下さい。(念のため、危険ですので本当にはやらないで下さい。)もちろん実際のスイングでは、すべての部分の速度が144キロではありませんが、いかに空気抵抗が大変なものであるか、実感としておわかりいただけたのではないでしょうか。話は飛びますが、プロ野球のピッチャーのボールの時速が160キロ近いというのは驚きます。我々のヘッドスピードより早く手を振っているのでしょうか・・・・・。

●インパクトでは何が起きているのか?

インパクトの直後、ボールがかなりつぶれているお話はしました。さて2センチメートルの間をもう少し詳しく見てみましょう。昔、物理の一番最初に、ニュートンの運動の法則というのを習ったのを覚えていらっしゃいますか?この名前は覚えていなくても、慣性とか作用反作用という言葉は ご存じだと思います。ゴルフの科学では、この「慣性」という物理の法則が非常に大きな意味を持ちますので、一応覚えておいてください。

すごい勢いで飛んできたヘッドがボールに当たると、ボールはそのままの状態でいたい(慣性)のに、すごい力でたたかれるので、ボール全体はほとんど動いていないのに、あたった所がつぶれている、という状況が生まれます(創刊号のイラスト参照)。ボールはとても反発力が強くできてい るので、つぶれた所は急激に元に戻ろうとします(復元力)。縮んだバネが伸びるような感じです。その結果ボールはヘッドを蹴り上げながら、も のすごい勢いで飛んで行くことになります。ボールがヘッドから離れる瞬間のボールの形状は、今度は縦に伸びたような形になっています。

さて、飛び出すボールはどれくらいのスピードなのかという事ですが、これは運動量保存の法則を用い、ヘッドのスピードと重さ、ボールの重さと反発係数から求められます。式は難しいと思いますので、結論だけお話しますと、ヘッドの重さが200グラム、ボールの反発係数が0.8、ヘッドスピードが40メートル程度の人の場合、ボールの初速はだいたい60メートル毎秒前後になります。ヘッドスピードの約1.5倍ということになります。(詳細を知りたい方は文末の文献を参照して下さい)これを時速に換算すると、216キロとなります。号外Vol.01ではヘッドスピードは144キロだというお話をしましたが、ボールの初速で言えば松坂君のボールなどとは比較にならない速さですね。

一方、クラブの方はどうでしょうか。時速144キロでボールにあたる訳ですが、当然そのエネルギーの一部をボールに分配してしまうのですから、インパクトの直後は、このスピードが遅くなります。そういう意味でもう少し細かく計算すれば、2センチメートルではなく速度が遅くなった分、もう少し距離も長いのかもしれません。クラブはその後元のスピードを取り戻してからフィニッシュを迎えるようですが、インパクト後のクラブ の話にはあまり興味がないので、これくらいにしておきます。

●1メートル飛んだ後のボールについて

今までの議論では、ボールの回転(スピン)についてはあまり触れませんでしたが、ボールの回転は非常に重要なポイントです。次号でお話する予定のギア効果や、ボールが飛ぶ原理などにも大きく関わってきます。

ボールの弾道は、1万分の5秒で決まると言いましたが、実はこの瞬間の出来事は非常に複雑で、ボールはつぶれ復元しながら飛んでいく。クラブは速度を落としながら、実はボールにエネルギーを与えながら様々な反作用を受けて、変形したり回転したりするのです。その相互作用で、ボール にはスピンがかかります。

しかし、1メートル飛んだ後のボールは、それが尾崎将司のボールであろうと、初心者のボールであろうと、次の2つのベクトル(方向と大きさを持つもの)に集約されると言っていいと思います。もちろん自然現象の影響やボール自体の物理的性質は無視しています。

  • (1)ボールの向いている方向とそのスピード
  • (2)ボールの回転する方向とその回転数(自転のようなもの)

この2つがインパクトの結果です。この結果にはもうクラブの要素はありませんから、話はもっと簡単です。この結果を導くインパクトは、バックスイングからダウンスイングの結果だとすれば、理論的にボールの弾道を考えてスイングをする、または練習をするなら、そのスイングの結果であ るインパクトがどのようになっており、その結果のボールがどういう2つのベクトル(上記2つの要素)になっているかを、充分に考える必要があ るでしょう。

どんな素晴らしいドライバーショットも、引っかけたどフックボールも、(1)ボールの向いている方向とスピード、(2)スピンの方向と回転数で決まります。素晴らしいドライバーショットは、ボールの方向がフェアウエイセンター、スピードは限りなく速く、スピンの方向はバックスピン で左右の回転はなし、回転数は適度に大きい。引っかけボールは、ボールの方向はフェアウエイ左端、スピードはほどほど、スピンは極端にフック回転、回転数もかなり早い。こんなイメージでしょうか。

最終結果であるボールの弾道を見て、打った直後の1メートル先ではボールどんな動きをしており、その結果をもたらしたインパクトでは、クラブとボールがどんな動きをしたのか、そしてそのインパクトという結果をもたらしたスイングはどうであったのか、何が悪かったのか・・・。このよ うに振り返りながらスイングをする事が、とても重要なそして意味のある練習であると思います。

●次回の号外は・・・・。

次回の号外は、この1メートル飛んだ後のボールについてに関連して、ピッチャーの投げる様々なボールについて考えて見たいと思います。


◆参考文献(易しい順です)

  • ・ 図解雑学「ゴルフの科学」ナツメ社、1,200円
  • ・「ゴルフの科学」ブルーバックス、講談社、940円(読者からの推薦)
  • ・「新・飛ばしの科学」廣済堂出版社、1,200円

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