診断所見・片山豊氏
驚くほどアクが強く頑固である。徹底した負けず嫌いで、周囲を自由に自分の思いどおりに動かせるような環境の中で最も生きがいを感じ、適応しやすい。
全体の雰囲気はおおむね思索的であるが、同時にまた、自分の直感を信じ、思い切った行動に出られる人でもある。
すなわち、既成の枠にとらわれず、自由に思索し、しかもそれを、さしたる葛藤もなく現実に行動化する。
それが時に、氏生来の勝気で強引な性格と相まって、特に常識の殻に縛られた人々の目からみると、奇異に感じ、異様な行動として受け取られたりする。
しかし、それらは、氏の主観的な世界からみれば、いずれも論理的で確信にみち、氏をよく知る者にとっては、強い共感と説得力すらもっているのである。
氏の行動面における図太さは、その激しさとともに、氏の個性の重要な一部をなすが、その裏には、このような自己に対するほぼ絶対に近い自信と信念がある。そしてそれが、並はずれた向上心、野心的で強い衝動欲求と重なりあい、あのエネルギッシュであくことを知らない強烈な個性への原動力となっているのである。
氏の歴史は、まさに氏自身の可能性に対する挑戦であり、際限なく続く果てしない戦いである。氏にとって、最も耐え難いことは、自分の主観を断ち切ってまで周囲に妥協し、従属することである。
したがって氏は環境に対しても、ありのままの自分を思い切りぶつけ、むしろ相手を改変することによって適応しようとする。
それはともすると環境と対立し、思わぬ摩擦や抵抗の原因となったりしやすい。しかしながら、現実の氏はさしたる抵抗もなく環境とよく調和し、適応している。
それは、おそらく氏が、そうした自己に内在する問題に人一倍敏感であり、意識的あるいは無意識的に、強くコントロールしているからであろう。つまり氏は少なくとも意識面では全体の調和に最大の価値をおき、その激しい行動の背後でつねに最悪の事態を予想し、牽制しているのである。
それは必ずしも氏本来の衝動欲求とは平行せず、したがって、表の行動が激しければ激しいほど、その裏には、いい知れぬ不安や葛藤、孤独感がある。氏はそれを知的に合理化し、さらに新しい行動へと駆り立て、防衛しているのである。
すなわち氏は一見いかにも外向的で、なんら葛藤のない安定した印象を受けるが、内面はむしろ逆で、極端に過敏な内向的性格者のそれである。氏の適応はこの極端な両者のまさにその均衡の上に保たれているといれるかもしれない。
(使用した検査は、リクルート性格検査TI型、RPI型、ロールシャッハテスト。)
診断者は東京経済大学講師・日本リクルートセンターテスト開発委員・橋口英俊。
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