Vol.12 1999.12.3発行
ちょっとゴルフを長くやっている方なら、「ブラックシャフト」という言葉を聞いことがあると思いますが、初めてカーボンシャフトが出た時には、色が黒くてそれはカッコいいものでした。ただ、シャフトが柔らかすぎて、女性か高齢者向けのクラブというイメージが強かった記憶があります。最近は、材料技術の進歩で、硬いカーボンがどんどん出てきています。
さて、スチールとカーボンでは何が違うのでしょうか。一番違うのは、何と言ても重さです。スチールシャフトが110グラムだとすると、カーボンシャフとは40グラム以下の物もあるくらいで、その差は歴然です。通常のドライバーの総重量が270~300グラムくらいですから、かなりシャフトの占める比率も変わってきます。軽い素材であるカーボンが出てきたことで、全体重量が軽いクラブが実現した訳ですが、それ以上に、シャフトが軽くなった分ヘッドを重くできる様になった効果の方が、大きいと思います。
ヘッドを重くできる利点は、もちろん運動量保存の法則で、同じヘッドスピードでも重いヘッドの方が、飛び出すボールの速度が上がるという効果もありますが、先日の長尺クラブ編でご説明しました通り、ヘッドを大きくすることで周辺に重量配分、かつ全体重量を大きくすることによって、クラブの慣性モーメントが増大し、スイートエリアが拡大する事が一番のメリットです。
クラブを選ぶ時に、バランスを気にする方が多いと思います。実際、バランスが強いクラブほど振りにくいのですが、必ずしもこれは最適な指標ではないですし、同じバランスでも、全く違うパフォーマンスを示す場合がありますので、注意が必要です。(バランスの定義や詳細説明は次回以降に予定しています。)
シャフトを選ぶ上で、意外と見落としがちなシャフトの重さですが、とても重要な要素なので、よくチェックする必要があるでしょう。
RシャフトとかさSシャフトと言われる記号が、シャフトの硬さを表しています。硬さの記号は、硬い方から順に下記のようになっています。
(硬い)XX→X→XS→S→SR→R→RA→A→AL→L(柔らかい)
一般的な男性ゴルファーはR~Sを使っています。ただしこの指標は絶対的なものではなく、メーカーによってもかなりバラツキがあるようなので、メーカー間の比較はしない方が無難です。実際に振ってみたり、しならせてみて選ぶのが賢明です。
測定法は、グリップから5.5インチの所を支え、ヘッド側に加重をかけた時のしなり具合で決めます。一般に、力の強い人は硬いものを、非力な人は柔らかいものを選ぶのがよいとされています。ヘッドスピードの遅い人が、シャフトの硬いクラブを振ると、棍棒を振り回している様な感じがし、鞭のようなしなりを全く感じる事ができません。逆にヘッドスピードの速い人が、柔らかいシャフトのクラブを振ると、ヘッドの軌道が安定せず方向性が悪くなります。また次号以降で触れたいと思いますが、振動数や位相にも関係し、打ち出し角度も大きく変わってしまいます。
硬いシャフトはハードヒッター向きと言いますが、もともと、硬いシャフト=重い、柔らかいシャフト=軽い、という構図があり、従って硬いシャフトがパワーのある人向きとされているのであって、いつもお話しますが、パラメーター(ここでは重さと硬さ)が伴って変わる場合、判断には充分な注意が必要です。方向性や安定性を考えれば同じ重さなら、硬めのシャフトの方がよいという事も言えます。
トルクとは、シャフトのねじれ易さの指標です。ある部分に一定の力を加えた時にねじれる角度で表します。ヘッドスピードが40m/秒の人で、4度位が標準的と言われています。硬さと同様、ハードヒッターはトルクの小さいもの、つまりねじれにくいもの、非力な人はトルクの大きいものを使うのがよいというのが定説です。
しかし、これも硬さと同様、重い=硬い=ねじれにくい=トルクが小さい=パワーのある人向き、という構図があり、重くて硬いが、非常にねじれやすいというシャフトはないので、トルクだけで向き不向きを論じるのはおかしいと思います。同時に色々な特性が変わってしまわないような試作品を作り、個々の特性を決める要因を分離して分析できれば、さらに色々な事が分かるでしょう。
一般には、トルクが小さい方が、フェイス面のブレが小さく方向性が安定するが、逆に打球感への影響が大きく、芯をはずした時の違和感が増大すると言われています。クラブを選ぶ上では、他の特性を固定して、トルクだけ小さいものをくださいと言っても、そういう商品はないので、同じ様に軽いシャフトであれば、トルクの小さい方がよいと思います。(硬さを選ぶ時と同じですね。)
次の項で、シャフトがどこで曲がるかという話をするのですが、最近は「どこでねじれるか」という議論もあり、今後の開発競争が楽しみです。
先調子とか、手元調子という言葉があります。これは、シャフトがどこで曲がるかを表す指標です。よりヘッドに近い所が曲がるクラブを、先調子のクラブと言います。逆にグリップに近い所で曲がるクラブを手元調子と言います。その中間を中調子と言います。
一般に、先調子の方が球が上がりやすく、手元調子の方が上がりにくい傾向にあります。これはインパクト時の実質的なロフトが、シャフトのしなりによって変わることが原因です。また、手元調子の方が安定性があり、吹き上がりが少ないスピンの少ない球筋になるとも言われます。また、コックを使う人と、スイングで打つ人によって、最適なキックポイントがあるとも言われます。
クラブ設計の上では、重要な要素だとは思いますが、これも今までの議論と同じように、調子だけを選べるわけではないので、クラブ選びにおいては、どちらかと言えば、優先順位が低いかもしれません。
最近、シャフトで話題になっているのが太さです。超長尺クラブだけではなく、アイアンでも太いシャフトが出てきています。シャフトが太いとグリップも太くなり、違和感もあります。ただ、クラブの重量を感じにくい、小手先でこねなくなるというメリットも考えられます。太ければそれだけ硬さも硬く、トルクも小さくなるので、方向性を重視するアイアンこそ、軽くて硬くてねじれない理想のシャフトになる可能性もあります。今後の動向に注目したいと思います。
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