Vol.1 1999.06.09発行
スライスを本当に直そうと思ったら、グリップ、スタンス、スイング・・・すべてを直さなくてはいけません。特にグリップ、 プロのグリップを見ると、どんな変則的な打ち方をしている杉原だろうが、パーマーだろうがきちとしたスクエア グリップ(親指と人差し指の間のV字がほぼ顔の中心を向いている)です。またどのプロも指先で握っており、自 転車のハンドルを握るようなグリップをしている人はいません。なぜそうなのかと言えば、一時的に変速グリップ でうまく行っていても、継続的にボールをコントロールするのは難しいという事です。フックグリップはやはりそ の名前の通りフックしやすい訳です。
もしまだゴルフを始めたばかりという方、練習量が豊富でグリップ改造ができそうだという方にはスクエアグリップ をお勧めします。しかし多くのアベレージゴルファーにとって、グリップをいじる事は、次のコンペに向けて自殺す るに等しいと言えます。それではグリップを変えずにスライスやフックを直すにはどうすればよいか。スイングをこ うしろとか、トップはこうしろとか、ボールの位置はこうだとか、おそらく外野がうるさい事でしょう。確かに色々 な解決方法はあると思いますが、基本は「なぜスライスするか?」を知ることです。
所詮ゴルフはティグラウンドのボールを目的にホールに入れるスポーツ(ゲーム?)です。何たって主役はボールです。どんなヘッドであろうがシャフトであろうが、プロが打とうが初心者が打とうが関係ありません。結果はボールに聞いてくれ!この考え方が正解です。最近KONISHIKIがボールになってホールに落ちるCMをご覧になった方も多いと思います。あなたは、ティーの上に置かれたKONISHIKIだと思ってください。
さてアドレスです。巨大なフェースが自分の目の前から音も立てずに離れて行きます。次の瞬間、途方もないスピードで固い金属の固まりが自分めがけて飛んで来るのです。たたきつけられた力で自分のおなかは20%くらいへこんでしまいます。しかし反発力のよいおなかは、強力なバネと化して思い切り空中に飛び出すのです。金属の固まりがあたってから、おなかから離れるまでの時間は、1万分の5秒(0.0005秒)、たったこれだけで、どこに、どれだけ、どんな軌道で飛んでいくのかが決まるのです。
クラブを色々迷って何万も出して買って、さんざん打ちっ放しに行って色々な人に何だかんだ言われてスイングを改造したりして、さて本番。でもティーショットのすべては、たった0.0005秒で決まるのです。この一瞬で何が起きているのかをよく考えて見ましょう。
今回は、飛距離については触れません。「曲がり」だけを考えてみます。 KONISIKIのおなかに何が起きたか。大きく言えば2つの事しか起きていません。1つはどっちの方向から金属が飛んで来たか。もう1つはどんな角度で金属の面があたったかです。もし狙った方向のちょうど反対側から金属面が直角に飛んで来たなら、まっすぐその方向に飛ぶ出すしかないでしょう。曲がるのは、そうでないからなのです。(ヘッドのスイートスポットをはずした場合の現象は機会を見てお話します。今回は一応真ん中にあたった場合のお話です。)
もうおわかりだと思いますが、フェイスがまっすぐで軌道がまっすぐならスライスもフックもないのです。あたりまえですが、これが難しいのです。
アベレージゴルファーのほとんどは、アウトサイドインつまりクラブを自分の右前の方から左後ろに引っ張っています。(下図中央参照)自分のスイングをビデオで見た方はよく分かると思いますが、打ったあとの左ひじは、かなり後ろに引けているか、脇が開いているかでしょう。プロとアマチュアのスイングの大きな違いがここにあります。クラブの底についた傷を見て下さい。フェイス面と垂直にキズがついている人は少ないと思います。これらの現象は、スライスの大きな原因の一つとなります。
軌道が右前から左後ろに曲がっているとすれば、ボールにはスライス回転が加わるので、左に出たあとスライスして行きます。さらに悪いことには、多くの場フェースの向きも右を向いています(下図右参照)。軌道が左を向いている上フェースが右を向いているのですから、フェアウエイど真ん中に行かせるためには、その2つの左右への力がぴったりつり合うというまぐれが起きない限りフェアウエイ中央には落ちないわけです。ちょっとでもそのバランスがずれれば、左に行ったり右に行ったり、そりゃあもう大変です。
■正しいインパクト | ■軌道が曲がっている →スライス回転になる |
■フェイスが曲がっている →スライス回転になる |
スライスを根本的に直そうと思ったら、軌道とインパクトのフェイスの向きを直すしかないのです。しかしこれが本当に大変なことなのです。
南を向いてまっすぐ立って長い棒で運動場に反時計回りで円を描く事を考えて下さい。この軌道の中で、東を向いているのはどこでしょうか。そうです、自分のまっすぐ正面(真南)ここ1点しかありません。ドライバーのように長いクラブは、まさに運動場に円を描いているようなものです。正面より右よりの部分の軌道は当然狙う方向より右に向いていますよね。逆に正面より左の部分の軌道は左を向いています。もし軌道を右に向かせたいときは、ボールを右に置く、左に向かせたいときは左におけば、軌道の修正はできます。ただしこれは応急処置であり、本来はアウトサイドインを直す事です。(これは大変難しいことですが・・)
■腰(肩)が開いたスイング →スライスする |
■手打ちのスイング →フックする |
フェイスの向きが、スタンスの時から開いている場合はもちろんそれを修正する必要がありますが、多くのスライサ ーは意識してか無意識かわかりませんが、フェイスが少しクローズ(左に向いている)の場合が多いようです。 100%スライスする人ならもっとクローズにするのも応急処置としてはいいかもしれませんが、そういう時に限っ て左に出たりするものです。
フェイスの向きが開いて当たる原因に一つに、腰の開きがあります。腰が先に回って あとからクラブが下りてくるため、インパクトの瞬間にクラブのグリップよりヘッドが遅れてくる訳です(右図 左側イラスト参照)。昔ジャイアンツにいた篠塚という名打者(現コーチ)は、腰を開いてレフト前にうまく流す 芸術的なヒットをよく打ちました。彼のゴルフスイングはやはり腰が開く打ち方をしており、 球筋はスライス系であったと思います。
よく疲れて手打ちになると引っかけるといわれますが、疲れて 腰が回らなくなることが原因です。それならそれを逆手に取って、スライスする人は、腰を回しながら手打ちに すればよいのです。手打ちという事は、意識としては腰よりも手よりもグリップよりも先にヘッドを下ろ してやって、ボールに当てるという意味です(上図右側イラスト参照)。
一度腰を回さないようにして、 意識的に手打ちで打って見て下さい。 もっと強烈に試すなら、右45度を向いて手だけで打って見ればいいです。絶対に腰が開きませんから、ボールは フックするはずです。練習場では極端なことをやって、理論を実験的に確認する必要があります。
もう一つの方法として右手首を打つ瞬間に返す方法があります。極端に言えば打つときに両手でドアノブを左に 回すような動きを加えるのです。こうすることで、ひっかけボールが出るはずです。このへんの事については次 回スライスとフックを打ち分ける秘密の方法編で改めて説明します。実はスライスとフックを打ち分ける練習を することが、曲がりの理論を理解し、曲がりを修正する一番よい方法なのです。
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